イヤイヤ期

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夢女、オリジナルフレグランスを作る

 

夢女である*1

妄想の世界に生きる夢女は、しばしば妄想が凝り固まり、キャラクターの人格のどこまでが公式由来で、どこからが妄想の産物なのかの区別もつかない状態に陥ってしまう。

つまり、「自分の解釈」が固まりやすい、悲しい生き物である。諸説ある。

 

今日はそんなうたプリ夢女が、オリジナルのイメージフレグランスを作りにいったレポ、および雑感を綴ろうと思う。

 

 

 

前置き:キャラグッズとしての香水の難しさ

オタク向けグッズの幅が広がって久しい。特にファンを多く抱える作品は、キャラの顔をそのままグッズ化したものから日常に溶け込むもの、動物化したぬいぐるみなど、多岐にわたるグッズが出る。

そんなグッズの中でも、買う側として難しいと感じるのが香水である。

大抵のグッズ香水は、キャラのイメージ(概念)を具象化したものであり、そこには作り手のキャラ解釈が介在する。そのキャラ解釈が自分と合うかどうか、というところがまずひとつ目の難しさだ。

また、香水そのものの難しさとして、説明書きを読んだところで香りを完全に想像するのは困難だという点がある。肌に乗せたら、時間が経ったら、どのように香るのかは、実際に試してみないと分からない。加えて、香りの好き嫌いはなかなかどうして乗り越えがたいものであり、苦手な香りだった場合は封印する以外に術がなくなってしまう。

そして、にもかかわらず、それなりの値段がしたり、取り扱い店舗が限定的であったり、注文から届くまでに時間がかかったりする。買ってみなければグッズとしての満足度も香水としての満足度も測れないのに、買うハードルが高い。以上の理由から、今までグッズ香水には手を出してこなかった。

それでも、キャラクターの香水というのは魅力的なものである。視覚と聴覚でしか捉えられなかったキャラクターの存在に、嗅覚という奥行きが加わるのだ。憧れはある。でもどうにも手が出ない。こちらは解釈の凝り固まった夢女だ、解釈一致する気がしない。何なら嫌いな香りの予感さえある。というかそもそも今売ってない。

 

「それなら最近よくある自分たちで作れるやつに行ったら楽しそう」

 

というわけで、思い立つがままに、夢女仲間と二人でオリジナルフレグランスを調香しに行くことにした。

 

ステップ1:妄想と方向性を固める

香水を作りに行こうと決めてまず行うことは、「誰の・どのようなイメージで香りを作るか」を決めることだった。ややこしい話だが、私も友人も複数の妄想を並行することで、複数の彼氏を脳内に飼えるタイプだ。つまり、脳内彼氏が複数いる。どの彼氏のことも愛しているため、「誰のイメージにするか」は脳内の彼女人格の中で喧嘩が起きかねない重要問題である。

今回は、「無味無臭以外考えられない」天宮静と「ブレンドしなくても市販の香水で香りが見つかりそう」な神宮寺レンを選外として、「妄想の奥行きは欲しいけれども香水の香りはしなそうな男」皇綺羅の香りを作ってみようと決めた。

「どのような」については、概ね思いつくパターンは以下の3つである。

・その人がつけてそうな香り

・その人の概念の香り

・その人が好きそうな女性の香り

先述の通り、脳内の綺羅は香水を使っていないので一番目は無し。三番目はどうにもならなかったときの最終手段として、「概念の香り」という抽象的すぎるものをまとめていく。

※このあたりから妄想の話が濃くなっていくので注意※

綺羅のイメージといって一番に思い浮かぶワードは「甘くて重い」だった。何が甘くて重いのか、当然、私への「愛」である。長年待ちわびているドルチェヴィータの綺羅ルートも、ヘヴ7人の中で一番甘いに違いないという確信がある(次点で瑛一様だろう)。綺羅のソロ曲も一途で強い愛を歌っている。綺羅の愛は、甘くて重い。

このイメージを香りにも反映させるのが最も簡単だろうと思いながらも、どうしても懸念事項があった。私は、グルマン系など甘い香りや、ムスクやアンバーの重たい香りが苦手なのである。「お金を払って苦手な香りを手に入れる」を防げるはずが、手ずから苦手な香りを手に入れる方向に進もうとしているのではないか……。考えるためにソロ曲を聞けば聞くほど、甘くて重い綺羅の愛がのしかかってくる。

これ以上は考えるのをやめ、「お店にある甘い香りや重い香りがどれほどのものか」を確かめてから考えるということにして当日を待った。

 

ステップ2:お店で調香をする

今回行くことにしたのは、実際に調香してファブリックミスト*2を作れる店である。

調香という初めての経験が何よりも楽しく、工程の話だけで盛りだくさんになりそうだったので、調香の流れについては以下の画像にまとめた。ぜひご覧いただきたい。

上の工程に沿って、さらに妄想やら実感を混ぜて詳細を述べていきたい。

 

①お店にある35種類の香りから好きなものを選ぶ

「最大で5種類までの香りを混ぜることができるが、まずはとにかく好きなものをどんどん選んでみてほしい」ということで、何周もして香りを確かめまくる。作りに行っておいて言うことではないが、私自身は香りの選り好みが激しいほうで、おそらく許容範囲がとても狭い。それゆえ、全然選べなかったらどうしようという不安を抱えていたのだが、実際に試してみるとどうしても苦手な香りはせいぜい4つ5つ程度で、かなり好きな香りもあり、思った以上に良い方向で悩むこととなった。

ともあれ、今回作りたいのは「自分の好きな香り」ではなく「綺羅の愛の香り」である。何回もガラスドームを振って香りを確かめながら、少しずつ自分のイメージを探っていく必要があった。

華やかなフラワーブーケの香りのイメージではない、華やかさというよりも落ち着きのあるイメージである。

かといって、落ち着いて生活に馴染む、ほのかなハーバルのイメージでもない。静かだが、確固たる存在感のあるイメージである。

瑞々しく香るフルーツイメージでもない。どっしりと大人びた甘さ、重さのイメージである。

そんな風に思いを巡らせつつ、ついでに別時空で応援している人*3を思わせるど真ん中の香りにもうっかりチェックを入れつつ、少しずつ絞り込んでいった。

 

②実際にブレンドする候補を5種類に絞り込む

妄想を元に少しずつ絞り込んだ後、調香師さんにアドバイスを貰ってバランスを考慮しながら選んでいく。香りのバランスや主張の強さは自分だけでは分からないので、プロの指南が非常にありがたかった。*4選んだ5つは以下の通りである。

 

06. THE ROYAL☆
 T:ベルガモット
 M:ブラックティー
 L:ホワイトティー、​アンバー、ムスク
アールグレイの紅茶の香り。優雅な雰囲気と落ち着いた甘さがイメージに合う気がして選出。余談だが、紅茶のフレグランスって普段飲んでいる紅茶のイメージと少し違う気がしていまいちピンと来ないなと常々思う。

 

26. LUXE BREATH☆
 T:ユーカリベルガモット
 M:ラベンダー、ジャスミン、ガーデニア
 L:ウッディ、アンバー、ムスク
ラベンダーをほんのり感じるリラックス系の香り。単体だとややウッディだが、全体的に強すぎず、さり気なく優しい雰囲気が気に入った。


14. MIDNIGHT OSMANTHUS
 T:​オレンジ、ピーチ、ミント
 M:オスマンサスフラワー
 L:​オスマンサス、ホワイトムスク
非常に優しい金木犀の香り。香りとしては他のものよりも弱く感じたが、その奥ゆかしさが逆に気に入った。おまけに綺羅は秋冬が似合う。

 

23. CAMELLIAN
 T:アップル、カシス、アプリコット
 M:カメリア アコード(ホワイトカメリア、ピオニー、ピーチ、ジャスミン
 L:ポメグラネート*5
名前の通り椿をイメージした香りらしいが、かなり強い甘さのある香り。店内のフレグランスの中で一番強く、混ぜても消えない香りらしい。何回も嗅いでいるうちに酔いそうな気がして一時は選外にしたが、他の甘い香りよりは好みであること、カシスや柘榴は綺羅のイメージに合うことなどから、迷った末にとりあえず選んでみることにした。

 

30. MYSTIC BERRY
 T:ラズベリー、カシス、アップル
 M:ローズ、ミュゲ、ジャスミン
 L:スイートベリー、ブラックベリー、ウッディ
ベリー系の甘酸っぱさがありながらも、どこか可愛すぎない香り。上記の23番と同様、他の香りの甘さに比べるとベリー系の甘さは好きだったために選出。これか23番かどちらかでも良いのでは?と思って迷ったが、23番を採用しない可能性も視野に入れて両方選ぶことにした。

 

以上、5つのうち上から2つを「特に好きな香り」と申告し、いよいよ実際の調香へと移る。

 

③キャップの色と液色、フレグランスの名前を決める

オタクの気持ちをブチ上げる工程、それが「色決め」である。今回すべての工程で非常に時間をかけて悩み抜いているが、色だけは迷う理由が無かった。

次いで、フレグランスに貼るラベルに入れる名前を決める。フレグランスに名前をつけられることは事前に知っており、いくつか候補を考えてはいたのだが、いざとなると店内でオタク丸出しのネーミングをつけることへの羞恥心が邪魔して無意味に難航した。結局「香りができてから名前を決定してもいいですか?」とお願いして後回しにした。

 

④調香

工程としては画像に記した通り、まず最初に選んだ二種類をブレンドしたものをベースとし、「そこに香りを足したらどうなるか」をムエットを使って確認する作業の繰り返しである。

単体だとどこか甘ったるさがあると思っていた紅茶の香りもハーブが混ざるとすっきりとし、弱いと思っていた金木犀も混ざることで明らかに香りが変わる。楽しい半面、真剣に嗅ぐほどに分からなくなっていき、コーヒー豆とお友達になりながら「嫌いな香りになってはいないか」を一番にブレンドを重ねた。

4つまではすんなりと決まったが、最後まで迷ったのがCAMELLIANを入れるかどうかである。調香師さんに言われていた通り、非常に主張の強い香りで、一気に甘さが全面に出てくる。苦手な香りになっては元も子もない、この香りがイメージかというともはや分からない。迷った末、自分の脳内で「まっ、綺羅の愛って甘いからな~~」という声が後押しをし、結局選んだ5つをすべてブレンドすることにした。

最後に、少しでも甘さを落ち着かせるよう他の香りを足してバランスを取ってもらい、ついに香りが完成した。

 

⑤仕上げ

後回しにしていた名前をつけたら、悩むところはすべて終了である。あとは色付けの工程を撮影してはしゃぎ、キャップとラベルをセットしてもらい、ついに完成である。

(パープルなのは間違ったわけでなく、水色よりはこっちのほうが近いと思ったため。)

完成品はオリジナルの巾着袋に入れて渡してくれるのだが、「巾着にお好きな香りをプッシュできますよ~」と言われお願いしたら、想像の倍くらいの量を吹き付けていてちょっとおもしろかった。

 

ステップ3:香りの再確認

おうちに帰るまでが調香体験。ということで、調香してから一週間と少し、使って見ての雑感を述べて終わりにしようと思う。

まず調香した日の帰り。この日は不幸にもハンカチを忘れてしまったので、手持ちのポーチに軽く香りをつけて、ポーチから漂う香りを感じながら電車に揺られた。不審者である。帰宅後、鼻を近づけて思いっきり息を吸い込むと、まさに「少し重さのある甘い香り」がそこにあり、大満足しながら寝床についた。なお、綺羅の夢は見なかった。

それから謎の鼻詰まりを起こし、数日。

部屋のクッションに吹き付けると、記憶よりも甘い香りが脳いっぱいに広がった。

調香当日は強い香りをたくさん嗅いで鼻が鈍くなっていたのか、はたまた何かが違うのか。あまり近づくと酔いそうな甘さだったが、「ま、綺羅って近すぎるとクラクラきそうなところあるもんな」と納得して、クッションを離れたところに置いた。

遠くからほんのり漂ってくる香りは華やかで可愛らしい甘さで、「少し遠くにあるからこその甘さと恋しさ」という雰囲気がした。これが今の私と綺羅との恋の距離感だと、自分の好きなように解釈できるのが、オリジナルの良いところである。

 

この日は甘さを強く感じたが、一度記事を書き終えて数日後の秋晴れの日にまた蓋を開けた時には、ふんわりと漂う甘さに満ち足りた気持ちになり、さらに一週間後、気付けば瓶の中身は目に見えて減っていた。

 

とどのつまり、大層気に入ったのであった。

 

次に作るときには、どんな香りが出来上がるだろうか。すでにそんなことを考えてしまうくらい、夢中になれる体験であった。

 

 

 

*1:ちなみに、読みは「ゆめおんな」派である

*2:香水より香りが弱いぶん使い勝手も良い(とはいえ結構香る)

*3:画像にはうっかり名前が入っている

*4:なお、このときのプロのアドバイスによりブルーローズが候補から外れた。

*5:なんのこっちゃと思ったらざくろのことらしい